理論空燃比は14.7じゃない⁉︎今更聞けない理論空燃比の求め方
こんにちは監督の由元です。
ECUで燃料噴射量のセッティングをする際、ターゲットにする空燃比はどのように決めますか? 排ガス抑制、燃費重視、パワー重視、ノッキング抑制、排気温度抑制等、目的によって変わりますが、まずは基本となる理論空燃比、通称ストイキの求め方について学びましょう。理論空燃比で完全燃焼に近づければCO等の有害ガスが出ないので地球環境にも優しい^ ^。
日常会話(?)ではストイキと言ってますが、一応、この記事内では理論空燃比と表現します。
理論空燃比とは
空燃比[=A/F(エーバイエフ)]は空気と燃料の重量比で、理論空燃比はガソリンが完全燃焼する空燃比のこと。ガソリンを完全燃焼させる理論空燃比はだいたい14.7です。だいたい14.7とはどういうことか、これ以上のことを知らなくても生活に困ることはありませんが、もう少し詳しく説明します。
ガソリンは空気中の酸素O2と、ガソリンに含まれる炭素C、水素H、が完全燃焼すると、すすや有害ガスが出ずに、二酸化炭素CO2と水H2Oだけになります。その完全燃焼させるための燃料と空気の重量比が理論空燃比です。ではなぜ14.7か?合っているのか?を検証します。
ガソリンの化学式はC7H14とかC8H18とか、多くの炭化水素の混合物で、CmHn(mとnは数字が入る)です。
完全燃焼する際の化学反応式は、
CmHn + {(m+n/4)・O2} = mCO2 + n/2・H2O
例えばCH4だとすると、CH4+2O2=CO2+2H2O といったように化学反応式は成立します。
水炭比
上記説明でもあったとおり、ガソリンは多くの炭化水素の混合物で、CmHn中の、m・nの数字にばらつきがあるため、必要な酸素量もガソリンに含まれるCとHの量によって変わります。そこでCとHの比率を表す「水炭比」というものが使われます。例えばC7H14であれば、水炭比は2.0です。
上記完全燃焼の化学反応式に昔学校で習ったmol質量(H=1g、C=12g、O=16g)を当てはめると、ガソリン量に対する必要な酸素重量がわかります。また、酸素は空気中の23.2%ですので、空気重量も分かります。つまり水炭比から理論空燃比が分かります。
Cを1として、無理やり化学式を作ると、
C1H水炭比 + {(1+水炭比/4}・O2
この式にmol質量を当てはめると、12+水炭比 + (1+水炭比/4)×32 これを展開すると → 32+8×水炭比
ガソリン1当たりの必要酸素量は、
32+8×水炭比 / 12+水炭比 となります。
この結果に空気中の酸素量(重量割合)23.2%で割ってあげれば、ガソリン1あたりの空気重量が出ます。
一般的なガソリンの水炭比は1.8~2.0くらいですので、これを式ににあてはめると、理論空燃比が出せます。
水炭比 1.8 32+8×1.8 / 12+1.8 / 0.232 = 14.5
水炭比 2.0 32+8× 2.0/ 12+2.0 / 0.232 = 14.8
このように、水炭比が異なるガソリンで理論空燃比に差が出ることが分かります。
通常、水炭比は公開されていなため、スタンドのガソリンの数値はわかりませんが、多分ばらつきはあります。
つまり、色んなガソリンスタンドで給油するたび、理論空燃比は変ってしまう可能性があるのですね。
では、どのように燃料のセッティングをするか? 下に記載した「λ」という数値で見ます。
λ(ラムダ、 LAMBDA) = 空気過剰率
理論空燃比を1.0として、理論空燃比より空気が多いか少ないかを示す数字。
空燃比 / 理論空燃比
例えば、1.1は空気が多い、つまり燃料薄い、逆に0.9だと空気が少ない、つまり濃い、という数字。
λで見ればガソリンの水炭比に関わらず1.0が理論空燃比なので、燃料が薄いか濃いか判断できますね。
ではどうやってλを見るかというと、λ計があればベスト(良い空燃比計にはλ表示機能がある)。
λ計がない時はO2センサの信号をみるとわかります。通称ナローバンドO2センサで0⇔1vの出力が切り替わるポイントが理論空燃比になります。

まとめ
ガソリンによって水炭比にばらつきがあり、理論空燃比がかわることが理解できたでしょうか?
水炭比が高めのガソリンは理論空燃比が高くなるため、使う燃料は少なくなります。
但し、水炭比が低い方が傾向的に比重が重くエネルギー密度が高く、走り方によっては燃費が良くなる場合もあり、結局どっちが燃費に有利かわかりません(笑)
ただ、ガソリンによってエンジンに多少影響があるのは事実。
今の一般の車はO2センサとECUが常に理論空燃比に制御してくれていますが、レース車等のO2センサが無い車で理論空燃比を狙うなら、厳密には給油するたびに燃料のセッティングを変える必要があります。大差ないですが、基礎知識ということで。これを機に、理論空燃比やECUのセッティングに興味を持っていただけると嬉しいです。
